2026年8月13日の夜、千葉県で線状降水帯による記録的な大雨が降りました。道路の冠水で車が水に浸かってしまった方、冠水した道路を走ってしまった方へ。今いちばん大事なことを最初に書きます。エンジンをかけないでください。

結論

水が引いても、エンジンは絶対にかけない。
今夜やることは「保険会社に連絡」「レッカー手配」「写真を撮る」の3つだけです。

🔴 再始動でエンジンが壊れる(ウォーターハンマー) 🔴 感電・車両火災の危険(JAF・国土交通省が注意喚起) 🟡 移動はレッカーで。自走しない 🟢 台風・豪雨の水没は車両保険の対象(エコノミー型も)

↓ 「なぜかけてはいけないか」30秒 → 「今夜やること3つ」の順で、そのまま上から読んでください。

✓ 車が水に浸かった・浸かったかもしれない方 このページの手順がそのまま使えます

✓ 冠水路を走ってしまい、その後の様子がおかしい方 同じ手順で。エンジンを止めて点検に出してください

✗ 今まさに車内に水が入ってきている方 車を捨てて避難が最優先です。車の対処はすべて後回しにしてください

この記事の目次8項目

🚫 なぜ「水が引いたらエンジンをかけてみる」がダメなのか(30秒)

理由は2つです。

1) エンジンが物理的に壊れる(ウォーターハンマー)

水は空気とちがって圧縮できません。エンジンの吸気口から水を吸い込んだ状態でエンジンを回すと、ピストンが水を押しつぶそうとして行き場がなくなり、内部の部品(コンロッド等)が曲がる・折れる。これがウォーターハンマー現象です。

こうなるとエンジン載せ替え級の修理になります。かけてみるまでは「乾かせば直った」かもしれない車を、セル一回で廃車級にしてしまう。だから絶対にかけないでください。

2) 感電・車両火災の危険

JAFは公式に「水が引いたからといって、エンジンを掛けると破損や感電の危険があるので絶対にやめてください」と案内しています。国土交通省も水没車について「自分でエンジンをかけない」よう注意喚起しています。電気系統がショートして、後日自然に発火するケースもあります(海水をかぶった場合は特に危険)。


✅ 今夜やること3つ

1. 保険会社(または代理店)に電話する

契約者向けの事故受付は24時間の会社がほとんどです。「冠水した」と伝えれば、レッカーの手配や今後の流れを案内してくれます。台風・豪雨による水没は車両保険を付けていれば補償の対象です(エコノミー型でも対象。詳しくは下の関連記事へ)。

2. 移動が必要ならレッカーを頼む

自走は厳禁です(理由は上の通り)。保険のロードサービス、またはJAF(会員でなくても有償で利用可)に依頼してください。大規模災害の直後は依頼が集中して時間がかかります。安全な場所に停まっているなら、無理に今夜動かさなくても大丈夫です。

3. スマホで写真を撮っておく

保険請求と査定の両方で効きます。撮るのはこの4点。

撮るもの なぜ必要か
車全体と周囲の冠水状況 被害状況の証拠
ボディに残った水位の跡(泥の線) どこまで浸かったかの証明
車内(フロア・シート・トランク) 床上浸水かどうかの判断材料
ナンバープレートを含むカット 車両の特定

+余裕があれば: バッテリーのマイナス端子を外す

国土交通省は、水没車は発火のおそれがあるため「バッテリーのマイナス側のターミナルを外す」よう案内しています。外した端子は金属部に触れないようテープなどで覆ってください。

🔴 ただしハイブリッド車・EVは触らない。高電圧バッテリーを積んでいるため、国土交通省も「むやみに触らない」よう注意喚起しています。工具を持って近づかず、そのままプロに任せてください。作業に自信がない場合も無理は不要です。端子外しは「できれば」で十分です。


🚗 外車ならではの注意点

販売店として輸入車を扱っている立場から、国産車との違いを3つだけ。

  1. 電装部品が多く、水に弱い。輸入車は快適装備・制御系のユニット類が多く、車種によってはシート下やフロア周りに制御ユニットが配置されているものもあります。床上まで水が入ると、見た目以上に被害が広がっていることがあります。
  2. 部品が高く、納期が長い。制御ユニットや配線(ハーネス)は本国取り寄せになることが多く、修理費が国産車の1.5〜3倍・納期数週間〜数ヶ月というケースも珍しくありません。
  3. 「一度乾いて動いた」が信用できない。電子系の水害は後から症状が出ます。今動いていても、必ず点検を受けてください。

📏 どこまで浸かったかで、その後が決まる

冠水の水位別の危険度図。床下まで(タイヤの半分程度)はマフラー・下回りが濡れた状態で、点検前提で修理できる可能性が高い。床上まで(フロアカーペットが濡れた)は車内に水が入った状態で、電装被害の可能性大・全損扱いになるケースが多い。ダッシュボード・シート上端超えはエンジン・制御系まで水没し、修理はほぼ非現実的で全損前提。どの水位でも共通でエンジンは絶対にかけない
水位 状態 見通し
🟢 床下まで(タイヤの半分程度) マフラー・下回りが濡れた 点検前提で修理できる可能性が高い
🟡 床上(フロアカーペットが濡れた) 車内に水が入った 電装被害の可能性大。修理費が時価を超え「全損」扱いになるケースが多い
🔴 ダッシュボード・シート上端超え エンジン・制御系まで水没 修理はほぼ非現実的。全損前提で保険・売却・廃車の判断へ

「床上まで入ったら全損になりやすい」というのは、修理費が車の時価(市場価格)を超えやすいためです。とくに年式の古い外車は時価が低く評価されるため、この分岐が早く来ます。


💡 動かない・修理費が高すぎる場合の3つの選択肢

修理見積もりと保険の回答が出たら、次の3択です。

選択肢1: 車両保険で直す・全損なら保険金で乗り換える

台風・豪雨による水没は車両保険(一般型・エコノミー型とも)の対象です。保険で出るのか、全損認定と時価の現実、等級への影響は別記事で詳しくまとめました。 → 水没は車両保険で出るのか 補償範囲と全損の現実

選択肢2: 水没車のまま売る

水没車・不動車を専門に買い取る業者がいます。「動かないから0円」ではありません。部品取り・海外輸出の需要があるためです。 → 外車の買取・査定 高く売るコツと業者選び過走行の外車はまだ売れる 査定と廃車の分かれ目

選択肢3: 廃車にする(費用0円・還付金あり)

修理も売却も難しい状態なら、廃車専門業者へ。引き取り無料の業者が多く、自動車税・重量税・自賠責の還付金が戻る場合があります。 → 外車の廃車 費用0円・還付金まで 手順と業者選び

💡 迷ったらこれ:まず保険会社の回答(全損か・いくら出るか)を待つ。その金額を見てから「直す/売る/廃車」を比べるのが損しない順番です。修理費が高い時の考え方は外車修理代 高い時の選択肢にもまとめています。


❓ よくある質問

Q. 冠水路を走ったが、今は普通に動く。放置していい? A. 放置は危険です。電子系・ブレーキの水害は後から症状が出ます。走行をやめて点検に出してください。エンジンから異音がしたら即停止です。

Q. 水が引いた後、車内が濡れていなければ大丈夫? A. 床下浸水でも下回り・マフラー・電気配線が傷んでいることがあります。見た目で判断せず、点検を受けてから使ってください。

Q. レッカーはどこに頼めばいい? A. まず加入中の保険のロードサービス(多くは無料枠あり)。つながらなければJAF(非会員は有償)。災害直後は混み合うため、安全な場所なら翌日以降でも構いません。

Q. エンジンをかけてしまった。もう手遅れ? A. かかった・かからないに関わらず、それ以上操作せずプロの点検へ。一度かかっても内部に水が残っていれば後から壊れます。状況を保険会社にも正直に伝えてください。

Q. 保険を使うと来年の保険料は上がる? A. 水害での車両保険使用は1等級ダウン(事故有係数1年)です。3等級ダウンの事故より影響は小さめ。受け取る保険金と保険料の増加分を比べて判断します。


✅ まとめ(今夜のチェックリスト)

やること チェック
☐ エンジンをかけない(キーを離す) 最優先
☐ 保険会社に電話(24時間受付) 補償と流れの確認
☐ 写真4点(全体・水位跡・車内・ナンバー) 保険・査定の証拠
☐ 移動はレッカーのみ・自走しない ウォーターハンマー防止
☐ HV/EVは触らない・任せる 感電防止

まずは体の安全が最優先です。車は保険と選択肢でリカバリーできます。落ち着いて、上の3つだけ今夜済ませてください。


🔗 関連記事

最終確認日:2026年8月