結論:買う前にこれだけはやる
①エンジンは自分で掛けさせてもらう(警告灯が全部消えるか・回転が安定するか)
②少しでいいので試乗して、異音がないか確かめる
③「警告灯が点いた履歴」と「保証で何が直せるか」を確認する
↓ なぜこの3つなのか。売る側の人間として、理由を正直に書きます。
✓ これから中古の外車を買う・候補の車がある このページで「避けるべき車」と店頭チェックを確認
✗ もう買った車の警告灯が点いて困っている まず[警告灯の一覧と修理費](/posts/771)・[症状から調べる診断ツール](/shindan)へ
この記事の目次全8項目
なぜ売る側の私が「買うな」を書くのか
私は現役で輸入車の販売店を経営しています。つまり、本来は「買ってください」と言う側の人間です。
それでもこの記事を書くのは、中古車の記事のほとんどが「買わせたい側」か「売らせたい側」によって書かれているからです。買わせたい記事は、避けるべき車のことをぼかして書きます。私は逆に、自分が仕入れの現場で実際に避けている車をそのまま書きます。悪い1台をつかんで「外車はもう二度と買わない」となる人を減らす方が、長い目で見てこの業界のためにもなると思っているからです。
私が仕入れで絶対に避けるのは「警告灯が複数点いている車」
一番の地雷を1つだけ挙げるなら、これです。メーターの警告灯が複数点いている車。
警告灯が1個なら、原因を特定できます。直せる見込みも立ちます。ところが複数点いている車は、電装(車の電気系統)の根が深いことが多く、1つ直しても次が出ます。プロが仕入れの現場で値段がいくら安くても手を出さない、それが複数点灯です。
もう1つ避けているのが、エンジンやミッション(変速機)本体に手が入った形跡のある車です。車の心臓部を一度開けている車は、その後も同じ場所で問題が続くことが少なくありません。
「相場より安い」に飛びつくと何が起きるか
実際にあった話です。相場より明らかに安い外車を買った直後に、ミッション系が故障。修理の見積もりを取ったら、金額が車両価格を超えていました。直せば買った値段より高くつく、手放そうにも故障車は二束三文。直すも地獄、手放すも地獄です。
安い車には安い理由があります。外車の場合、その理由が「重い故障の予兆」だったときの傷が国産車より深い。修理代が高いからです。
修復歴あり(事故で骨格=フレームまで直した車)の格安車も同じ構図です。外車はセンサーと電子制御が多く、骨格修正の影響が電装トラブルとして後から出やすい。しかも修理代が高いので、同じ修復歴でも国産より割に合いません。
店頭でできる一番かんたんなチェック
素人でもできて、一番効くチェックを聞かれたら、私はこう答えます。
- エンジンを自分で掛けさせてもらう。 キーをひねった(ボタンを押した)直後、メーターの警告灯は一度全部点いて、数秒で消えるのが正常です。消えずに残る警告灯がないか、そしてアイドリング(停車中のエンジン回転)が安定しているかを見ます。
- 少しでいいので試乗させてもらう。 見るのは加速でも内装でもなく、異音がないかです。走り出し・ハンドルを切ったとき・段差で、ゴトゴト・キュルキュルといった音がないか耳を澄ませてください。
エンジン始動も試乗も断る店なら、その車はやめておく。それだけで大きな地雷はかなり避けられます。
「警告灯を消して売る」店は実在する
言いにくいことですが、実在します。警告灯は診断機を使えば一度消せます。問題のある車の警告灯を消して、何もなかった顔で店頭に並べる。そういう売り方をする店は、残念ながらあります。
厄介なのは、一度消されるとすぐには再点灯しないことも多いという点です。つまり「その場でエンジンを掛けて警告灯が消えたからOK」だけでは、消し逃げは見抜けません。そこで、次の2段構えで防衛します。
防衛1:警告灯が点いた履歴がないか確認する
商談のとき、「この車、警告灯が点いた履歴はありますか」と言葉にして聞いてください。点検整備記録や納車前整備の内容と合わせて、答えを聞く。誠実な店なら経緯を説明できますし、口ごもる店ならその時点で判断材料になります。
自分でも確認できます。運転席の足元にある差込口(OBD2ポート)に挿してスマホとつなぐ小型の診断機を使うと、車のコンピューターに残った故障コードを読めます。さらに、故障コードを消すと、車側には「自己診断がやり直しになった」という未完了の状態が残ります。買う直前に警告灯を消された車は、この未完了が多く並ぶため、「最近消したばかり」のサインになります。おおむね1996年以降の外車で使えます。
商談で「診断機をつながせてもらえますか」とお願いしてみるのも手です。応じてくれる店は誠実、嫌がる店は警戒。頼むこと自体がふるいになります。診断機の選び方は外車OBD2診断機の選び方にまとめています。
防衛2:それでも不安なら、保証で守る
履歴を完全に確かめる方法はありません。だから最後は保証を確認しておく。買った後に警告灯が点いても保証で直せるなら、消し逃げをつかまされたときの傷が浅くて済みます。保証の中身の見方は、この後の章で書きます。
なお「格安の外車」というと、整備記録簿がない・持ち主が何度も替わっている、といった点を気にする人が多いのですが、私の感覚では、それ自体はそこまで重要ではありません。本当に怖いのは、警告灯を消されて悪い個体を隠されている可能性です。安さの理由を確かめる手段が、上の2段構えです。
過走行(10万km超)の外車は、どこから修理が噴き出すか
現場の体感では、10万km前後からゴム・樹脂類と水回り(ウォーターポンプ・ホース類)が一斉に来ます。ドイツ車は8〜10万kmがひとつの山です。「この車種は壊れる」というより、メーカーと年式で分かれるというのが実感に近い。
過走行の格安車を検討するなら、この「一斉に来る整備」を車両価格に足して考えてください。買った後に実際いくらかかるかは、最初の車検が38万円になった内訳と年間維持費の実額に実例を書いています。
保証は「付いているか」ではなく「何が対象か」
中古車の保証で、付いていても意味が薄い典型が**「エンジン・ミッション本体のみ対象」の保証**です。
外車で実際に壊れやすいのは、エンジン本体ではなく電装・センサー・補機類(エンジンの周りに付く部品。発電機やウォーターポンプなど)です。壊れやすい場所が保証の対象外なら、その保証は実質使えません。契約前に**「電装品とセンサーは保証の対象ですか」**と一言聞いてください。この質問に即答できる店は、保証をちゃんと運用している店です。
まとめ:この3つだけ持ち帰ってください
- エンジンは自分で掛ける。警告灯が全部消えるか・アイドリングが安定しているか
- 少しでも試乗して異音を確認。始動も試乗も断る店の車は買わない
- 警告灯の履歴を言葉にして聞き、保証は「電装・センサーが対象か」で見る。自分で確かめるなら診断機という手もある
警告灯が複数点いた車と、理由の分からない格安車。この2つを避けるだけで、中古外車の大失敗はほぼ防げます。買った後の維持費が気になる人は年間維持費の実額を、今の車の症状が不安な人は症状から調べる診断ツールをどうぞ。
この記事は、現役・輸入車販売店オーナーの私が、仕入れの現場で実際に避けている車とその理由を、これから中古の外車を買う人向けにそのまま書いたものです。 — 経営者(現役販売店オーナー)

