結論

輸入車のオイルは、粘度(5W-30など)ではなくアプルーバル(メーカー承認)で選びます。
「MB 229.51」「VW 504 00」「BMW LL-04」——この番号が合っているかが、合否のすべてです。

アプルーバルとは 車のメーカーが自社のエンジンで試験して出す「承認」 最大の罠 缶やページの「承認」欄と「推奨」欄は別物。混ぜると指定外になります LIQUI MOLYが定番の理由 主要な承認を実際に取得していて、日本でも手に入りやすい

↓ まず「アプルーバルとは何か」を、10行で終わらせます。

✓ 輸入車に入れるオイルを自分で選びたい。何を見れば正解か知りたい このページのままでOK

✗ 自分の車種の指定規格と容量を今すぐ知りたい → 外車エンジンオイル 規格・容量 メーカー別早見

✗ 自分でオイル交換する手順を知りたい → 外車エンジンオイル DIY交換 工具・費用・手順

輸入車のオイルを選ぼうとすると、必ずここで詰まります。「5W-30と書いてあるオイルはたくさんあるのに、どれを入れていいのか分からない」。

粘度が合っていても、指定を外していれば不正解です。輸入車には、粘度とは別に「アプルーバル」という関門があります。これを知らずに安いオイルを入れて、排ガスのフィルターを詰まらせる人が実際にいます。

この記事は、そのアプルーバルを「自分で確認できる」ところまで落とし込みます。題材にはLIQUI MOLY(リキモリ)を使います。理由は、主要な承認を実際に取得していて、日本でも手に入りやすく、公式ページの書き方が確認の練習にちょうどいいからです。

この記事の目次12項目

アプルーバルとは 車のメーカーが自社の試験で出す「承認」

アプルーバル(Approval)は、日本語にするとメーカー承認です。

オイルメーカーが「うちのオイルは御社のエンジンに使えます」と申請し、車のメーカー側が自社のエンジンで試験をして、通れば承認を出す。この承認に付く番号が「MB 229.51」や「VW 504 00」です。

大事なのは、この承認がタダでも簡単でもないことです。

日本のエンジンオイルメーカーの解説では、BMWのある承認を1つ取るのに申請費用が116,500ユーロ(日本円で約1,400万円)かかり、取得まで2〜5か月、しかも有効期間は2年しかないと説明されています。

だから「輸入車用」と書いてあるだけの安いオイルには、たいてい承認がありません。取るのに金がかかるからです。缶に承認番号が並んでいること自体が、コストをかけた証拠になります。

ACEA規格とアプルーバルは別物です

ここを混ぜると判断を誤ります。並べて整理します。

種類 誰が決めるか 位置づけ
SAE粘度 米国自動車技術者協会 5W-30・0W-40 温度に対する硬さ。これだけで選ぶと外す
ACEA規格 欧州自動車工業会(業界団体) ACEA C3・A5/B5 欧州共通の性能クラス。業界の共通ものさし
アプルーバル 車のメーカー個社 MB 229.51・VW 504 00・BMW LL-04 そのメーカーが自社エンジンで試験して出す承認

取扱説明書に「BMW LL-04 または ACEA C3」と書かれている車なら、ACEA C3のオイルで足ります。この場合は承認まで要りません。

問題は「MB 229.51」のように承認番号だけが指定されている場合です。この書き方をしている車は、ACEA C3を満たしているだけのオイルでは指定を外します。取扱説明書がどちらの書き方をしているかを、必ず先に見てください。

メーカー別 アプルーバルの読み方

輸入車オーナーがよく見る番号を、意味つきで並べます。

メーカー よく見る承認 ざっくりした意味
メルセデス・ベンツ MB 229.5 ガソリン車と、DPFなしディーゼル向けの定番
MB 229.51 DPF付き向けの低灰分。今のベンツの主力
MB 229.52 229.51の後継。より新しい世代向け
MB 229.31 229.51と同系統の低灰分
BMW・MINI BMW LL-01 2002年以降のガソリン、2003年以降のDPFなしディーゼル
BMW LL-04 フィルター付き向けの低灰分。今の主力
BMW LL-17 FE+ 0W-20の省燃費系。2014年以降の一部
VW・アウディ VW 502 00/505 00 一般的な交換サイクルのガソリン/ディーゼル
VW 504 00/507 00 ロングライフ向けの低灰分。今の主力
VW 508 00/509 00 0W-20の省燃費系。新しい世代
VW 511 00 比較的新しい承認。5W-40の設定がある
ポルシェ A40・C20・C30・C40 世代とエンジンで分かれる
ジャガー/ランドローバー STJLR.03.5003 ACEA A5/B5系の指定に対応する承認
フォード WSS-M2C 913-D 欧州フォード系のガソリン/ディーゼル

「低灰分(ていかいぶん)」は、燃えたあとに残る灰が少ないという意味です。DPF(ディーゼル微粒子フィルター)やGPF(ガソリン微粒子フィルター)が付いた車で灰分の多いオイルを使うと、フィルターに灰が溜まって詰まります。「安いオイルを入れて壊す」の中身は、たいていこれです。

金額で言うとこうなります。規格違いのオイルでフィルターを詰まらせた場合、再生処理で2〜5万円、最悪の場合はフィルター交換で20〜40万円【業界相場】。オイル代で数千円を浮かせて、この額を払う人が実際にいます。

車種ごとの指定は外車エンジンオイル 規格・容量 メーカー別早見に一覧でまとめています。ベンツのCクラスは世代で規格が変わるのでW205 Cクラス オイル MB 229.51/229.5 違いW206 オイル交換 0W-20一択も見てください。

缶の「承認」と「推奨」は別物。ここが最大の落とし穴

この記事でいちばん実用的な話です。

オイルの缶や商品ページには、承認番号がずらりと並びます。ところが、その並びは2つの意味の違うグループに分かれています。

LIQUI MOLYの公式製品ページを開くと、次の2行が別々に書かれています。

行の名前 意味
Specifications / Approvals(承認) 実際に承認を取得しているもの。これが本物
LIQUI MOLY recommends this product for...(推奨) 「この指定の車にも使えると当社は考えます」。承認ではない

実例を出します。Top Tec 4600 5W-30という製品の公式表記です。

区分 内容
承認 ACEA C2・C3、API SQ、BMW Longlife-04、MB-Approval 229.31/229.51/229.52
推奨 Fiat 9.55535-S1/S3、Ford WSS-M2C 917-A、GM dexos2、Opel OV 040 1547、VW 505 00/505 01

VW 505 00は「承認」ではなく「推奨」の側にあります。つまりこの製品は、ベンツとBMWには承認付きで使えますが、VWについては承認を取っていません。

ネット通販の商品名では、この2つが混ぜて書かれていることがよくあります。「BMW LL-04/MB 229.51/VW 502/505 認証」のような書き方です。承認と推奨を1行にまとめてしまうと、承認を取っていない指定まで「認証」に見えます。

新車保証が効いている車や、ディーラーで整備記録を残している車では、ここが後で効いてきます。買う前に、必ずメーカー公式の製品ページで「承認」の行だけを見てください。

自分で確認する3ステップ

順番はこれだけです。

1. 取扱説明書かサービスブックで、指定の書き方を確認する

「MB 229.51」なのか「BMW LL-04 または ACEA C3」なのか。承認番号だけの指定か、ACEAでもいい指定かで、選べる範囲が変わります。車検証の型式だけでは決まりません。同じ車種でも年式とエンジンで指定が変わります。

2. オイル側の「承認」欄で、その番号を探す

メーカー公式の製品ページを開いて、「承認(Approvals)」の行に自分の番号があるかを見ます。推奨の行にしか無い場合は、指定を満たしていません。

3. 車のメーカー側の公開リストで裏を取る(できる場合)

メルセデス・ベンツは、承認を出したオイルの一覧を公式サイトで無料公開しています。operatingfluids.mercedes-benz.com が公式の公開先で、承認番号ごとにページが分かれています(229.51なら /sheet/229.51/en)。ここに製品名が載っていれば、承認は本物です。

BMWとVWには、同じように誰でも見られる一覧が見つけにくいのが実情です。その場合は手順2で判断してください。

もうひとつ、車種から引く道具もあります。LIQUI MOLYは無料のオイルガイドを公開していて、公式の説明では約80,000車種を収録し、40,000モデル超の承認情報を持っているとされています。メーカー・車種・エンジンを選ぶと、適合する製品が出ます。整備の現場で実際に使われている道具です。

LIQUI MOLYが輸入車で定番になった理由

ここでようやくブランドの話です。

LIQUI MOLYはドイツ・ウルムの会社で、創業は1957年。公式の会社説明では、オイル・添加剤・グリス・ケミカル類を合わせて約4,000品目を扱い、約150か国で販売しています。オイルと添加剤の開発・製造はドイツ国内です。ドイツの潤滑油カテゴリでは長年ベストブランドに選ばれてきた、と公式が説明しています。

資本の話も書いておきます。2018年1月1日付で、ドイツのヴュルト(Würth)グループが全株式を取得しました。ただしブランドは独立して運営されており、製品名や規格の連続性は保たれています。

輸入車オーナーにとっての実用的な価値は、次の2つに集約されます。

  1. 主要な承認を実際に取得している製品が揃っている。ベンツ・BMW・VW・ポルシェ・ジャガー/ランドローバーの指定に、公式の承認で当てられます
  2. 日本で普通に買える。価格比較サイトで190店を超える店舗が扱う製品もあり、入手性が高い

正直に言うと、承認を持つオイルはLIQUI MOLYだけではありません。指定さえ合っていれば他社でも構いません。この記事の主役はブランドではなく、承認の見方です。

LIQUI MOLYの主要オイル 承認の実値

公式が「承認」として掲げている内容だけを抜き出しました。推奨の行は含めていません。

製品 粘度 承認(公式表記)
Top Tec 4200 New Generation 5W-30 ACEA C3、API SQ、BMW Longlife-04、MB 229.31/229.51/229.52、Porsche C30、VW 504 00/507 00
Top Tec 4110 5W-40 ACEA C3、API SN、BMW Longlife-04、MB 229.31/229.51/229.52、Porsche C40VW 511 00
Top Tec 4600 5W-30 ACEA C2・C3、API SQ、BMW Longlife-04、MB 229.31/229.51/229.52
Special Tec F 5W-30 ACEA A5・B5、Ford WSS-M2C 913-DJaguar/Land Rover STJLR.03.5003

出典: LIQUI MOLY公式の各製品ページ(2026年7月時点)。

日本での実売は、Top Tec 4200 5W-30の5L缶が価格比較サイトの最安表示で14,650円、掲載店舗は191店でした(2026年7月29日時点)。

オイル交換そのものの工賃はディーラーで1.2〜2.5万円、街の整備工場で6,000〜1.5万円(いずれもオイル代別)が相場です【業界相場】。缶を自分で用意して持ち込めば、同じ規格のまま総額を下げられます。

ポルシェのA40指定車や、VW 511 00指定の車はこちらが当たります。

ジャガー/ランドローバー、欧州フォード系はこちらです。

VW・アウディの504 00/507 00指定車、ゴルフやA4の交換についてはVW ゴルフ エンジンオイル交換 5-8代目Audi A4 B9/B8 オイル VW 504 00/507 00にまとめています。MINIは世代で規格が真逆になるのでミニ クーパー オイル交換を必ず先に読んでください。

偽物と並行輸入品 フタのQRコードで確かめられる

有名ブランドには偽物が出ます。LIQUI MOLYも例外ではありません。

ただし、確認する手段が公式に用意されています。

公式の発表によると、2023年からオイル缶のフタにQRコードを付けており、2026年5月中旬からは、コピーできない緑の枠が付いた改良版に置き換わっています。すべてのオイル缶に付いています。

確認の流れはこうです。

  1. フタのQRコードをスマホで読む
  2. その場で本物かどうかの判定が出る。同時に製品情報も表示される
  3. 判定に食い違いがあった場合は、専用の認証アプリに転送されて再スキャンになる
  4. 偽物と判定されたら、報告フォームから通報できる

LIQUI MOLYのマーケティング責任者は、偽物について「金銭的な損失だけでなく、エンジンの損傷や、使う人の健康被害につながる場合もある」と述べています。オイルの偽物は、単なる損では済まないということです。

日本国内には、正規の輸入や取扱をうたう会社が複数あり、外から見て序列を判断するのは困難です。だから販売ルートで悩むより、届いた缶のフタを見るほうが確実です。QRコードは製造元が付けているもので、どこから買ったかに左右されません。

避けたい買い方は、他の部品と同じです。

  • 相場から極端に安い
  • 品番も承認表記もなく「輸入車用」とだけ書かれている
  • 返品条件が書かれていない

添加剤を足す前に考えること

LIQUI MOLYは添加剤でも有名で、CERA TEC(セラテック)がよく知られています。摩擦を減らす目的の製品です。

ここは正直に書きます。アプルーバルで指定されている車に添加剤を入れると、その時点で「承認されたオイルそのままの状態」ではなくなります。新車保証や延長保証が効いている車、ディーラーで整備記録を残している車では、入れないほうが揉めません。

一方で、保証の切れた古い車で、オイル消費や打音を少しでも抑えたいという目的なら、選択肢として成立します。当店でも、乗り切る前提の車に使うことはあります。ただし添加剤で直る故障はありません。減っている部分が戻ることもありません。

オイル消費そのものの見分け方と分岐は外車の白煙とオイル消費 オイル上がり/下がりの見分けと添加剤にまとめています。

つまずいたら、ここ

Q. アプルーバルとACEA規格、どちらを見ればいいですか。 まず取扱説明書の書き方を見てください。「MB 229.51」のように承認番号だけが指定されているならアプルーバル必須です。「BMW LL-04 または ACEA C3」のように書かれているならACEAで足ります。

Q. 粘度が合っていれば大丈夫ですか。 違います。粘度は温度に対する硬さの話で、灰分やロングライフ性能は別の話です。DPFやGPFが付いた車に灰分の多いオイルを入れると、フィルターが詰まります。

Q. 缶に承認番号がたくさん書いてあるのに、指定を外していると言われました。 「承認」欄と「推奨」欄が混ざっている可能性が高いです。メーカー公式の製品ページで、承認(Approvals)の行だけを見てください。推奨の行にしか無い番号は、承認ではありません。

Q. 承認されているオイルの一覧を自分で見られますか。 メルセデス・ベンツは公式サイトで無料公開しています(operatingfluids.mercedes-benz.com)。承認番号ごとにページが分かれています。BMWとVWは、同じように誰でも見られる一覧が見つけにくいのが実情です。

Q. LIQUI MOLYでなければダメですか。 そんなことはありません。承認さえ合っていれば他社でも構いません。この記事の目的は、承認の見方を身につけてもらうことです。

Q. 偽物かどうかを確かめられますか。 缶のフタにあるQRコードを読むと、その場で本物かどうか判定できます。2026年5月中旬からは、コピーできない緑枠付きの改良版になっています。

Q. ディーラー以外でオイル交換しても保証は大丈夫ですか。 指定の承認を満たすオイルを使い、交換の記録を残していれば、それ自体で保証が無効になる話にはなりません。記録が残っていないことのほうが後で問題になります。作業伝票とオイルの銘柄・規格を保管してください。

まとめ

  • アプルーバルは、車のメーカーが自社エンジンで試験して出す承認。取得には多額の費用と期間がかかり、有効期間も限られる
  • ACEA規格とアプルーバルは別物。取扱説明書の書き方でどちらが必要かが決まる
  • 缶や商品ページの承認番号は「承認」と「推奨」に分かれている。混ぜて読むと指定を外す
  • 確認は3ステップ。①取説で指定を見る ②オイル側の承認欄で番号を探す ③ベンツなら公式の公開リストで裏を取る
  • 「安いオイルで壊れる」の中身は、たいてい低灰分でないオイルによるフィルターの目詰まり
  • 偽物は缶のフタのQRコードで判定できる。2026年5月中旬から緑枠付きの改良版

オイルは、輸入車オーナーが自分の判断で費用を下げられる数少ない部分です。そのかわり、間違えると修理代が桁で変わります。承認番号を1つ確認するだけで、その分岐を自分で管理できるようになります。

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同じ「輸入車の部品ブランドは信用できるのか」という疑問は、オイル以外でも同じ形で出ます。

部品代を抑えたら、次は工賃と固定費です。


この記事は、現役で輸入車販売店を経営する立場から、「輸入車のオイルは何を見て選ぶのか」という一点に絞って、各メーカーの承認制度とLIQUI MOLY公式の表記をもとに整理しました。 — 現役・輸入車販売店オーナー

最終確認: 2026年7月時点(承認内容・価格は変動します。購入前に公式の製品ページで確認してください)

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