この記事の目次15項目

結論: B9はB8の持病を引き継いでいない。壊れる場所が変わった

① A4 B9(2016年2月〜)で押さえる3つ

  1. 冷却系(ウォーターポンプとサーモスタットが一体) … 5万kmを超えたあたりから冷却水の警告。8万〜15万円
  2. Sトロニック(7速の自動変速機) … オイル交換で予防できる。壊れると40万〜60万円
  3. リヤサスペンションのナット … 国土交通省のリコール対象。しかも2件セットで確認が要る

② これだけは危険

後ろから「ゴトゴト」と異音がする、ハンドルの手応えがおかしい。リコール対象のナットが腐食している可能性があります。

③ まずやること

車検証の型式を見る。「8W」で始まればB9、「8K」ならB8です。ネットで「アウディA4の持病」として語られるオイル消費や火災のリコールは、ほぼ全部8K(B8)の話で、B9は対象外です。

3秒早見表: 故障しやすい箇所と修理代

故障箇所 修理代の目安 緊急度
リヤサスのナット腐食(リコール) 対象なら無償。異音・ハンドルの違和感が出る 🔴
冷却水漏れ(ウォーターポンプ・サーモスタット一体) 8万〜15万円 🔴
Sトロニックの変速ショック・ジャダー 予防のオイル交換5万円 / 壊れると40万〜60万円 🟡
高圧燃料ポンプ(始動不良・加速の息継ぎ) 社外新品での交換例あり 🟡
エアコンコンプレッサー 16万〜20万円 🟡
MMI・バーチャルコックピットの不具合 専門店30万〜60万円 / ディーラー60万円〜 🟢
イグニッションコイル 社外1万〜2万円 / 純正7万円〜 🟢
バッテリー(AGM・登録が必要) 実店舗6.7万円〜 / ネット購入2.3万円〜 🟢

緊急度の目安: 🔴=走り続けずすぐ点検 / 🟡=放置すると被害が広がる。早めに点検 / 🟢=走行は可能。都合のよいときに修理へ

★金額は整備工場の公表値・作業記録に基づく目安です。頼み先や部品の選び方で変わるため、必ず実車で見積もりを取ってください。

※走行中に冷却水の警告が出たら、走り続けずに安全な場所へ停めてください。

まず型式の確認: B9は「8W」、B8は「8K」

A4のB9型は、日本ではセダンが2016年2月19日、アバントが2016年4月21日に発売されました。2020年10月7日のマイナーチェンジで後期型になります。

見分けは車検証の型式が確実です。

世代 型式の例 年式
B8 ABA-8KCDNF / DBA-8KCDN 2008年〜2016年
B9 前期 ABA-8WCVK(2.0T) / ABA-8WCVN(1.4T) 2016年2月〜2020年10月
B9 後期 3AA-8WDEM(35T) / 3AA-8WDDWF(45Tq) 2020年10月〜

外観では、後期はグリルが水平基調でフラットになり、LEDヘッドライトが標準、マフラー出口が丸型から台形に変わりました。全幅もフェンダーの張り出しで5mm広がっています。

→ 次にすること: 車検証の型式の3〜4文字目を見る。ここが世代を分ける唯一確実な情報です。

「アウディA4の持病」の大半は、B9では起きていない

ここがB9を選ぶうえで最も大事なところです。検索で出てくる「A4は壊れる」という話の中身を、型式で分解してみます。

よく語られる持病 実際に対象なのは 根拠
オイル消費(ピストンリング) B8(8K系)。対策ピストン交換の整備記録は8KCDNF・8KCDHなど 整備工場の作業記録
補助クーラントポンプの火災のおそれ(25,265台の大規模リコール) B8(8K系)。DBA-8KCDN・8KCDNFなど 国土交通省 リコール外-2731
高圧燃料ポンプの設計不良リコール B8世代(8K・8R・8V系) 国土交通省 リコール外-2583

この3つは、いずれも型式が8K系などのB8世代で、8W系のB9は含まれていません。

オイル消費については、日本語の整備記録を探しても、B9(8W系)で対策ピストンに交換した事例が見つかりません。B9のエンジンは直噴に加えてポート噴射を併用する世代で、吸気バルブにすすが溜まりにくい構造になっています。

ただし「B9は壊れない」ではありません。壊れる場所が入れ替わっただけです。次の章からがB9の話です。

B9の本命は冷却系。5万kmを超えたら警告を待たずに見る

B9でいちばん報告が多いのが、ウォーターポンプとサーモスタットハウジングが一体になったモジュールからの冷却水漏れです。走行5万kmを超えたあたりから、冷却水不足の警告に直面する個体が増えます。

分かりやすいサインは2つ。

  1. 駐車場の地面にピンク色の液体の跡がある
  2. 走行中に甘い匂いが漂う

原因はポンプのシール材の劣化か、ハウジング自体の歪みによる細かいひび割れです。茨城の整備工場には、「クーラントが減る」という症状で入庫したB9のA4で、定番のウォーターポンプから漏れていた実例があります。

費用の目安はウォーターポンプで8万〜15万円、サーモスタットまわりで10万〜13万円。放置するとオーバーヒートでエンジン本体に被害が及びます。

警告灯の色による判断はAudi 冷却水警告灯 赤は即停車 黄色は走れる 修理1-10万円へ。

→ 次にすること: 5万kmを超えていたら、次の点検で冷却水の量と漏れ跡を見てもらう。警告が出る前に気づけば、被害はポンプだけで止まります。

Sトロニックは予防のオイル交換が効く。壊すと40万〜60万円

A4 B9の変速機は、S4とRS4を除いて全グレードが7速Sトロニック(2つのクラッチで変速する湿式の機構)です。S4系だけが8速のティプトロニックになります。

出るのはこんな症状です。

  • 発進のときに大きなショックが出る
  • ガタガタと震える(ジャダー)
  • ブレーキを離してもクリープでにじり進まなくなる
  • 走って数分から数十分で警告灯が点く

原因は内部のクラッチの摩耗と、制御をつかさどるメカトロニクス(バルブボディ)の不良です。交換になると40万〜60万円という金額が並びます。

効くのは予防です。オーナーの整備記録では、ディーラーでのSトロニックオイル交換が推奨6万kmで費用5万円ほど・作業3時間弱。数十万円の修理を、5万円で遠ざけられる数少ない箇所です。

症状の見分け方はVW/Audi DSG不調 変速ショック 乾式・湿式の違いにまとめています。

→ 次にすること: 走行6万kmが近い、または交換履歴が分からないなら、Sトロニックオイルの交換を見積もってもらう。

リコールは2件セットで確認する。1件だけだとタイヤが減る

B9で確認してほしいリコールがあります。しかも2件がつながっています

1件目・リコール外-3276(2021年9月22日届出)

届出書の原文はこうです。リヤサスペンションアームを固定するナットの材料が不適切なため早期に腐食割れが生じるものがあり、アーム固定部のネジが緩むことでがたつき、異音が発生し、最悪の場合、ハンドル操作が正常に行えなくなるおそれがある。改善措置は「全車両、該当するナットを良品に交換する」です。

A4の対象は次のとおりです(輸入期間はいずれも令和3年2月4日〜3月11日)。

通称名 型式 台数
アウディ A4 35T 3AA-8WDEM 57
アウディ A4 45Tq 3AA-8WDDWF 18
アウディ A4 オールロード 3AA-8WDDWA 18

2件目・リコール外-3364(2022年3月31日届出)

こちらが本題です。原文を引用します。外-3276のリコール届出において、作業指示が不適切なため、リヤサスペンションアームを固定するナットを交換後にアライメント調整がされていないことがある。そのためタイヤが早期に摩耗し、最悪の場合、異常摩耗によりタイヤがパンクするおそれがある、というものです。

つまりリコール対応を受けた車が、そのせいでタイヤを傷めるという二次被害です。改善措置はアライメント点検と、必要に応じた調整・タイヤ交換。

中古で買うときは、1件目の実施記録があるなら2件目も実施済みかを必ず確認してください。1件目だけ済んでいる状態がいちばん危ない状態です。

タイヤの摩耗が偏っていないかの見方はアウディ 空気圧低下の警告 消し方2ステップ A4/Q5 規定値もへ。

→ 次にすること: 車検証の車台番号を用意して、正規ディーラーで外-3276と外-3364の実施状況を両方確認する。対象なら費用は0円です。

電装まわりはB9で目立つ。MMIは直し方で3倍変わる

B9のオーナーが実際に困っているのは、機械よりも画面まわりです。バーチャルコックピット(メーター内の大型ディスプレイ)の地図だけが真っ黒になる、ナビやオーディオの電源が落ちる、スピーカーから異音が出る、といった報告が並びます。

一度エンジンを切って再始動すると直る例もあり、その場合は診断機にエラーが残らないこともあります。まず再起動を試して、頻度が上がるようなら記録を取って持ち込むのが現実的です。

交換になったときの金額差は大きい箇所です。

頼み先 金額
ディーラー(ユニット交換) 60万円〜
カーナビ修理の専門店(純正MMIの修理) 25万円〜
専門店(社外ナビへの載せ替え) 40万円〜

「交換しかありません」と言われても、修理で直せる工場があります。走行に支障しない箇所なので、慌てて決めないでください。

35TFSIは年式で中身が違う。バッテリーもグレードで違う

中古で見るときの落とし穴を2つ。

「35TFSI」は同じ名前で別のエンジン

グレード名が数字表記に変わったのは2019年1月です。ここが紛らわしいところで、2019年1月時点の35TFSIは1.4L(150PS)、2020年10月のマイナーチェンジ以降の35TFSIは2.0L(150PS)です。同じ名前で排気量が違います。40TFSIはマイナーチェンジで日本のラインナップから消えました。

12Vのマイルドハイブリッドが載るのも2020年10月からで、Sモデルを除く全車が対象です。

バッテリーはボディとエンジンで指定が違う

B9のバッテリーはAGMという種類が指定です。しかも積んでいるものがグレードで分かれます。

車種 指定バッテリー
1.4L / 2.0L セダン LN4 AGM または LN5 AGM
3.0L セダン・アバント全車 LN6 AGM

アバントはセダンより大きいバッテリーが載ります。ここを間違えると物理的に入りません。費用は実店舗で本体6.3万円+工賃4千円の6.7万円ほど、ネットで買って持ち込めば2.3万円ほどからです。

交換したら診断機での登録作業が要ります。登録しないと充電制御が古いままになり、新しいバッテリーの寿命を縮めます。適合と手順はアウディ A3/A4/Q5 バッテリー上がり 症状と交換費用、警告の意味はアウディ バッテリー警告灯 走行中は危険 A4/Q5 修理1〜15万へ。

同じ故障でも、頼み先で修理代は大きく変わる

B9は前期でも登録から6年以上が過ぎ、保証が切れた個体が増えています。ここから先は工場選びが金額を決めます。

見るのは3つです。

  1. VW/Audi専用の診断機(ODIS等)を持っているか
  2. B9(8W系)の整備実績があるか
  3. OEM品や社外品を使う選択肢を持っているか

3つめが効きます。イグニッションコイルは純正7万円が社外1万〜2万円、エアコンコンプレッサーはOEM品で交換した実例、高圧燃料ポンプは社外新品での交換例があります。

車検が近いなら、車検と修理をまとめて頼める工場を先に探しておくと二度手間になりません。実際の車検費用の感覚として、2017年式のB9アバントで2回目の車検が総額187,296円(追加交換なし)という記録が公開されています。

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Sトロニックの修理は40万〜60万円、MMIの交換は60万円からです。この規模になると、直して乗り続けるのと、修理前に売って乗り換えるのを数字で並べる価値があります。お店に来るお客さまにも、そうお伝えしています。査定は無料です。

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DIYでできるのは早期発見まで

冷却系もSトロニックもMMIも、専用の診断機と設備が要ります。DIYでは直せません。できるのは症状を早く拾って、修理を小さく済ませることです。

VW/Audi系は診断機の相性がはっきり分かれます。汎用機だとエンジン系のコードしか読めず、Audi独自の項目に届きません。中古車を見に行くときに持っていけば、消される前の警告灯の履歴をその場で確認できます。

タイプ 向いている人 できること
まず安く試す: ELM327(汎用Bluetooth) まず警告灯の正体だけ知りたい人 エンジン系の故障コード(Pコード)の読み取り。初動の切り分けに
確実に広く見る: OBDeleven(VW/Audi系の専用機) Audiを長く乗る・バッテリー登録まで自分でやりたい人 全システム診断+バッテリー登録まで。コーディングは有料プランが必要

機種選びの全体像は外車OBD2診断機の選び方へ。

日常の予防で効くのはオイルです。B9の指定規格と容量はAudi A4 B9/B8 オイル VW 504 00/507 00・5W-30にまとめています。規格を外すと、すすの詰まりやエンジン内部の汚れにつながります。

よくある質問

Q. B9とB8、中古で選ぶならどちらですか? A. B9です。オイル消費の対策ピストン交換も、火災のおそれがある補助クーラントポンプのリコールも、高圧燃料ポンプのリコールも、対象はB8世代の型式で、B9(8W系)は含まれていません。ただし冷却系はB9でも定番なので、走行5万km超の個体は漏れ跡を見てください。

Q. B9になって「壊れなくなった」と考えていいですか? A. 正確には「壊れる場所が変わった」です。エンジン内部のトラブルは減りましたが、冷却系は変わらず定番で、画面まわり(MMI・バーチャルコックピット)の不具合はむしろB9で目立ちます。

Q. Sトロニックのオイルは替えたほうがいいですか? A. 替えたほうがいいです。交換の推奨は6万kmで費用5万円ほど。壊れてからだと40万〜60万円です。交換履歴が分からない中古なら、買ってすぐの実施を勧めます。

Q. 中古のB9を買うとき、何を見ればいいですか? A. 4つです。型式が8W系であること、リコール外-3276と外-3364が両方実施済みであること、駐車跡にピンク色の染みがないこと、Sトロニックオイルの交換履歴。買う前の共通の注意点は現役販売店が正直に言う 買ってはいけない中古外車と警告灯へ。

Q. ディーゼル(35TDI・40TDI)はどうですか? A. 日本では2021年1月発売と新しく、まだ実故障の報告が積み上がっていません。ディーゼル共通の注意点として、短距離ばかりだとすすが詰まりやすい点は押さえておいてください。詳しくは外車ディーゼルのDPF詰まり 警告灯と煤の対処へ。

まとめ: 型式を見れば、心配する場所が半分に減る

A4の故障情報は、B8とB9がごちゃ混ぜのまま語られています。車検証の型式が8W系だと分かった時点で、ネットで見た不安のかなりの部分は自分の車の話ではなくなります。

今日できる次の一歩

  • 後ろから異音・ハンドルに違和感 → リコール外-3276と外-3364の実施状況を両方確認する
  • 走行5万km超 → 冷却水の量と駐車跡のピンクの染みを点検してもらう
  • Sトロニックの履歴が不明 → オイル交換を見積もる。5万円で数十万円を遠ざけられます

修理代と並んで見直し余地が大きいのが自動車保険です。輸入車は保険料が高くなりがちで、同じ条件でも会社によって年数万円の差が出ます。形式別の目安はAudi A4 自動車保険 B8/B9 形式別の保険料と下げ方、外車全体の相場は外車の自動車保険は高い?現役販売店が実額で答えるへ。

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